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「お名前をお聞きしてもいいですか?
私の名前はご存知のようですから
平等であるべきかと...」
長谷部が聞いて来た。
「悠木桜子と申します。
わたしは友人と逸れてしまって探し回っていた所です。
すみません、お時間取らせてしまって。」
実家に帰ってゆっくり考えをまとめようと思った。
「あの、
また会えますか?
もしよかったら連絡先を...」
長谷部の後ろからサララが恥ずかしそうに小声で尋ねて来た。
わたしは迷った。
スマホはまだ無いだろうし、悠木屋の電話だとややこしくなりそうだし...
「また今度、おいで下さい。
わたくしの連絡先をお渡しします。」
長谷部は間髪を入れずに名刺をくれた。
2人が家に戻るとわたしは近場を散策しながらこれからの事を考えていた。
きっとこの世界がわたしの最後の場所でもうどこにも行く事はかなわない筈。
わたしはサラサを探しながら坂道に伸び始めた自分の影に話しかけていた。
でもこの世界はわたしが思っていたのとは全く違っていて、今まで彷徨って来た時間軸はほんの序章に過ぎなかった。
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