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携帯電話
わたしはサラサを探しながら駅の改札まで辿り着いた。
彼女と出会う事は出来なかったが家に会いに行こうと思っていた。
それよりわたしの家がどうなっているのか...
それが1番不安だった。
高校生位のわたしとバッタリ出会ったりでもしたら何が起こるか分からないと恐怖で心臓が痛くなった。
電車でウトウトしながら浅草の駅に着くと身体が軽くなった気がして気分が良かった。ここの所ずっと寝不足気味だったから深く寝入って蘇生したと思いながら改札口でポッケから定期券を何気に出して気付いた。
どうして定期券を持ってるの?
それに何この手?
シワの無い白い手と黒い学生カバン。
慌ててトイレに駆け込むと驚きの余り倒れそうになった。
そこには制服姿で黒髪ロングヘアーのスッピン高校生の自分が居た。
暫く頭が真っ白になり何も考えられなかった。
その時いきなりカバンの中からベルが聞こえた。
聞き覚えのある着信音。
二つ折りの懐かしい携帯を取り出して...
はい...
と言ってみた。
「あなた何をしてるの!?
遅いじゃない。
今どこなの?
心配掛けないの!」
母親だった。
混乱した頭に勢のある母の声がキンキンと響いた。
「今...駅だよ...
もう着くから...」
「もう、早く帰ってらっしゃい!」
母はそう言うと一方的に切った。
夕闇に仲見世通りの提灯が浮かび道標を作っているように見えた。
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