携帯電話

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わたしは何も無かったかのように悠木屋の前を通り過ぎ家の玄関に入ると顔が熱くなり心臓の高鳴りを感じた。 その時うしろからサララとサラサが、 「お邪魔します。」 と言って入って来た様に感じた。 そう言えばあの日 ここに来た2人は美代さんの生い立ちを聞いて泣き崩れた。 あれからわたしたちの時空の行き来が本格化した。 そのまま2階に上がり懐かしい勉強机に座り込んでこれからの事を考えながら着替えをした。 身体はまだ幼く胸の膨らみが初々しくて乳首も小さく桃色だった。 高1の自分の記憶が次第に鮮明になり、今まで経験して来た記憶が薄らいでいるように感じた。 「今日はサララと長谷部さんに出会えた。」 心の中で繰り返した。 あどけなさが残る可愛らしい中学生のサララ... 「明日はもう1度会いに行こう。」 わたしは何度も呟きながら眠りに落ちた。 目覚めると覚えている。 「今日はサララに会いに行こう。」 でも学校から帰る時はすっかり忘れていた。 そんな事を半月ほど続けていたある日、カバンの中を整理していると1枚のシンプルな名刺が出て来た。 執事 長谷部堅一 010-2574... 最初は誰の事だか忘れてしまっていたが、ふとサララの顔が浮かんで来て思い出した。 わたしは忘れない内に思い切って電話してみた。 「はい長谷部です。」 「あ、あのう突然すみませんが... わたし悠木と申します。」 「桜子さん? ああ、もうお忘れになられたと思い諦めておりました。 ご連絡お待ちしておりましたよ。」 「・・・」
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