携帯電話

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お昼過ぎまで寝ると食欲が出て来て体調も気分も良くなって来たので母親が作ってくれたお粥を食べた。 近くの公園を散歩していると通りを隔てたアパート前で人だかりを見つけた。 直ぐにサララが撮影していると思ったが、それよりもそのモダンなアパートに惹き付けられた。 そう... 記憶の引出しが一斉に開いたように画像が溢れ出た。 美代が住んでいたあのアパート... 拉致事件があった場所だった。 桜子は早足でアパートへ向かった。 カメラとライトの先には芸人2人とにこやかに微笑むサララがいた。 これから誰からも愛されるアイドルに成長して行く彼女の初々しさを見て幸せな気分だった。 ところがさっきから誰かの視線を感じていた。 ゆっくりとまわりを見渡すと長谷部が見つめていた。 桜子はそれに気付き手を振ろうとすると違っていた。 長谷部なのだけれどもいつもの彼の目ではなかった。 つり上がった目には狂気さえ感じた。 そして桜子を目がけて歩き寄って来た。 桜子は恐ろしくなって公園の方へ逃げた。 途中で振り返ると彼の姿はなかったがあんな恐ろしい顔を見て身体の震えが止まらなかった。 その時 着信音が鳴った。
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