行方不明

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途方に暮れて長谷部さんに電話しようとしたその時、 施設の脇にある駐車場を横切る影が見えた。 わたしは恐る恐る駐車場にある自転車置き場の方へ歩いた。 するとゆらゆらと揺れているような人影を見つけた。 「そこに居るのは誰!? サララなの...?」 うまく声が出せず呟くように言った。 「私です。 長谷部です。 見つけるのが ...遅すぎた いま救急車を呼びました。」 「まさか!」 わたしは長谷部の足元に横たわった黒い影に駆け寄った。 そして暗闇でひときわ白く浮かび上がったサララの顔を見つけた。 「サララ! 目を開けて! ダメだよ! 何があったの? サララ!」 わたしはサララを抱きかかえて何度も叫んだ。 しかしサララの身体は力が抜けてしまって、支えたわたしの腕に重くのしかかったままだった。 よく見ると首には赤くうっ血した跡があり、口角からは泡が溢れスカートは濡れていた。 しかしまだ頬には微かな赤みと温もりが感じられた。 わたしは直ぐにサララを寝かせ胸の中心を押し始めた。 そして唇を重ねて息を吹き入れた。 泣きながら何度も何度も名前を呼びながら繰り返した。 「無駄な事だ。 私のサランは...もう失われた。 私の望みがやっと叶ったんだよ。 サランの命と引き替えに美代とまた幸せな生活を取り戻せるんだ。」 「え! な、何を言ってるんですか?」 わたしは意味が分からないまま振り向くと... あの狂気の目をした長谷部がわたしに近付いて来た。 そしてわたしは何らかの衝撃を受けて気を失ってしまった。
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