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母娘
最近サラサは夢見が悪い。
汗ぐっしょりになりながら目覚める。
夢の中ではリアルな感覚で首を絞められ恐ろしい体験をし続けていた。
その内に逃げ惑いながら駅や公園やその辺りの風景を次第に記憶するようになった。
その事を母親に話すと、
「中学生になれば色々と多感になって変な感覚や感情になったりするもの。と軽くあしらわれて取合ってくれなかった。」
その内に不眠症が酷くなり思い切ってその夢の場所を訪ねてみる事にした。
駅に着くと夢で見たままの風景が広がっていて、その場所に行くのにそれほど時間は掛からなかった。
玉川図書館
名前までは知らなかったが施設の佇まいは夢と同じだった。
奥の駐車場の脇にある駐輪場
まさしくこの場所だ。
建物の影になり薄暗くじわっとした空気は湿度を含んで重く感じた。
上を見上げるとやはり夢で見た建物の風景だ。
首を締められ足をバタつかせ絶望的に空気を求めている時に見えていた風景。
サラサは胸を軽く叩きながら呼吸を整わせた。
でもあの夢は一体どういう事なのか?
自分の未来に起こる警鐘なのだろうか?
全く思い当たるふしはなく途方に暮れていると、
「お嬢さん、ここで何をしてるの?」
背後から女性の声がした。
「え...、特に何も...」
サラサはビックリして言葉に詰まってしまった。
しかしこの中年の女性を見た時、
何処かで会った様な気がした。
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