サラサの祖父

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純次は頭が真っ白になりながらやっとの思いで立っていた。 ユウキ ミヨ もう諦めて探すのも止めようと思い始めていただけに彼女の名前が突然、 しかも美代にそっくりな娘の口から飛び出した事で全身が震えた。 何とか詳しく話を聞きたいと思い、 思い切って両親に伺いを立てた。 事情を話すと快諾してくれた。 ただ美代とサラサが瓜二つだと言う事は言えなかった。 サラサは目を白黒させながらその時の状況を話した。 今日の午後6時 世田谷の玉川図書館ですね。 分かりました。 今日はお出で頂きありがとうございました。 純次はお礼もそこそこにすぐさま支度をした。 図書館への坂道はオレンジ色の夕陽と森から流れてくる闇が混在して焦る気持ちに拍車をかけた。 図書館の駐車場は白い線と数字が仄かに浮かび上がっていた。 純次は周りを見渡しながら奥の駐輪場へ向かったが、人の気配はなかった。 思い切って、 「美代」と呼んでみると後ろから声がした。 「どなたかお待ちですか? もしかして長谷部さんのお友達ですか?」 純次はビクッとして振り向くと、 店で会ったサラサが立っていた。 「サラサさん... どうしたんです? ここには来ないはずでは?」 純次は混乱した。 店で家族から決して行くなと念を押されていたからだ。 「わたし... そのような名前ではありませんし、ここへは知り合いに呼ばれて来たんですけど。」 「お忘れですか? 先ほど店でお会いした悠木です。」 「わたし知りません... 長谷部さんの知り合いかと思っただけです。 すみません。人違いです。」 「ほんとに先ほどお会いしたばかりなのに...」 「もう止めて下さい。 警察呼びますよ。」 彼女はバッグから携帯を取り出した。 「わ、分かりました。 私の勘違いでしょう。 妹が来るのではと思い待っていました。 すみません... ちょっと色々とありまして... 失礼しました。 でもこんな所に1人で大丈夫ですか?」 「ええ、おじ様が来ますので...」 「そうですか。 それじゃお気をつけて...」 純次は施設の駐車場に灯った外灯を見渡し、すっかり闇が支配した植栽の隙間を覗き込むようにしながら施設を出た。 サラサに間違いないと思ったがチョットだけ印象が違っていたようにも感じながら、この状況を把握できないまま闇に満ちた坂道を下り始めた。 すると坂道の途中にある薄暗い街灯の元で佇む人影があった。 純次は横目でチラッと見ると男性の様に見えた。 通り過ぎようとすると、 「悠木さん...」 声を掛けられた。
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