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最後の時
「サラン...
もうやめなさい!
お前の本当の母親を助けたくないのか?」
「えっ?
本当の母親...
何を仰っているのか分かりません。
それより早くこの人達を病院へ...」
サランがそう言いかけると長谷部は彼女の腕を力任せに掴み歩き出した。
「痛い!
痛いよ!
離して!おじ様!」
サランは必死に抵抗しながら訴えた。
「うるさい! 黙れ!
お前は本当にいつも泣きべそで弱い娘だ。」
長谷部はいきなりサランの口にハンカチを押し当てた。
すると今まで騒いでいた彼女は力無く身体を道端に沈めた。
更紗を肩に乗せサランを抱きかかえたシルエットは時に闇と混ざり、時に仄かな灯に照らされながら図書館の駐車場へ消えて行った。
駐輪場の隅に寝かせた2人の髪を長谷部は愛おしそうに撫でた。
「今しか無いんだ。
この先お前達はめぐり逢い、そして実の母親を必死に救おうとするだろう。
そうなると・・・」
突然サランが目を覚ました。
「...お腹が痛い。
苦しいよ。
ど...どうして?
おじ様...
こんな事を。
...わたしの事が嫌いになったの?」
「嫌いになる訳がないだろう。
私はね、美代を失ってしまった。
悠木美代...
君達の実の母であり私の最愛の人。」
「わたしの...
本当の...
母?」
サランは身体を走る経絡に新たな光が流れた様に感じ身震いした。
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