最後の時

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「違う... 違う違う違う! 私の弟が性に狂い、欲に溺れ、死を望んだ。 私ではない!」 「そうね... 貴方の中に隠れている堅次の仕業。 だから私はこうして堅次を消す為に貴方の前に現れたの。 堅一さん私が見える? 私は今 姪と共にあるの。 美代に見える? 桜子に見える? どっち?」 「ふざけた事を... 美代に決まっているじゃないか!」 「そう...」 悲しそうに呟いた。 その時 突然サラサが深い息を吐き出した。 すると先程まで居た美代が消え桜子がボンヤリと佇んでいた。 長谷部は頭を抱えながら叫んだ。 「どうして目覚める! 更紗! お前は消滅すべきだ!」 目をつり上げた長谷部は彼女の元へ走り寄り襟首を掴みそのまま地面へ押し付けた。 「キャァ〜!止めて!」 桜子は叫びながら長谷部に体当りした。 しかし高校生の彼女が敵う訳もなく片腕で首を掴まれ締め上げられた。 「邪魔する奴は許さない。 せっかく美代が来てくれたのに!」 長谷部は2人を思いっきり締め上げた。 サラサは遠のいて行く意識の中で美代に抱かれていた。 彼女はサラサの長い黒髪を優しく撫でていた。 「サラサ... 大丈夫だよ。 これからお姉ちゃんと一緒に生きて行くんだよ。」 「お母ちゃんは? お母ちゃんも一緒だよね。」 「そうね... 何時も一緒だよ。 それに貴方はとても強い娘。 試してみる? あなたの指の先にある物を私に取ってくれる?」 サラサは指を地面に這わせた。 そして覚えのある感触をやっとの思いで掴み上げた。 同時にそれは手から消えサラサの呼吸も静かに止まり息絶えた。
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