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皆さん、こんばんは!
私は月野 美香(つきの みか)、17歳。
前向きで明るいのが取り柄で、趣味は月光浴!
月の光って神秘的で穏やかで、優しい光が癒されるんだよね。
ほんとは裸で月光浴したいんだけど、親に全力で止められた。
まぁ、さすがにマンションが建ち並ぶ場所だからね…マズイよね。残念だけどさ。
将来家を買ったら、目一杯月明かりを浴びたいな~。
──ガラララ。
窓を開けてベランダに出る。
うん。今日も月がキレイです。
優しい光を浴びながら、何をするでもなくぼーっと星と月を眺めていると。
──ヒュン。
何か黒い小さいのが、ベランダの端に勢いよく落ちてきた。
「えっ?!……ま、まさか!隕石?!」
空には星が目一杯輝いていて。
そのうちの1つが落ちてきたとしても、おかしくないよね?!
え、スゴくない?
ワクワクしながら、謎の物体に近付いていく。
数歩進んだ所で、私はピタリと足を止めた。
「いたたた…あぁ、着地失敗した…。」
ん?喋ってる。
ま、まさか!宇宙人?!!
世紀の大発見じゃない?これ?
じっと物体を見ていると、くるりとこちらを振り返った小人のような姿が──みるみる大きくなって、私と同い年くらいの男の子になっていった。
手には三日月の形の刃がついた杖を持っていて、ローブみたいな布に身を包んでる姿がとっても神秘的。
「えっ?!なになに?どういうこと?宇宙人?手品?厨二病?ヤバい、凄い!!」
「え…」
一気に捲し立てる私とは裏腹に、その男の子は不審なモノを見るような顔で私を見ていた。
「ちょっと、ナニその顔ー。失礼じゃない?人の家に勝手に来たくせにさ。」
「いや、まぁ、そうなんだけど…え?全然驚かないねキミ。」
「えー!驚いてるよ!宇宙人でしょ?写真撮っていい?あ、もしかしたら写らないのかな!うわー凄いよね、それ!!」
キラキラ目を輝かせて彼に迫ると、後退りしていた彼はドンッとベランダの仕切りにぶつかった。
「ちょっと、キミは一旦落ち着こうか。」
「はい!」
「……。」
「………。」
「いや、何も喋らないんかーーい!」
「……はぁ。」
「ちょっと!私のツッコミをため息で返すって…ほんと失礼。」
「失礼なのは、キミだ。僕はこう見えてもコンスって言って……」
「えぇー!!コンスって月の神様じゃん!!本物?何でうちに来たの?!あ!私んち月野って名前だから?キャー!月野に産まれて良かったぁー!」
ばんざーいと両手を上げてはしゃぐ私をウンザリした顔で見つめるコンス君。
「詳しいね。確かに僕は月の神だけど。どんな役割があるか知ってる?」
「え、それは知らない。何なの?」
「罪人を裁くのが僕の仕事。」
「へぇー。そうなんだ。」
「うん。じゃあ、最後に何か言い残すことある?」
「ん?何で?」
「これからこの刃で、キミの首を狩るからさ。」
スラリと磨かれた美しい銀の刃が、私に向けられた。
「は?いやいや。私罪人でも何でもない、フツーの女子高生なんで。裁かれる理由がないよ?」
「理由はあるよ。」
「何?」
「毎日僕を眺めて長時間ブツブツ呟いてるでしょ。」
「え、うん。だって月光浴は私の趣味であり日課だからね!」
「うん。それが迷惑なの。だから裁きにきた。」
「えぇ?ナニソレ。横暴すぎる!!月が好きで眺めてるのに、それが迷惑って酷いよ!」
「じゃあ聞くけど。キミはよく知りもしない人から毎日毎日好きだって言われたらどう思う?」
「え…それは、嫌…かなぁ。」
「でしょ?そーゆーこと。」
「待って!よく知らない人だから嫌なんだよね。だったら、コンス君に私のこと知って欲しい!それならいいよね?」
「コンス君?僕は神だよ?馴れ馴れしいにもほどがあるね。やっぱり裁いて…」
「あぁぁ!待ってまって!コンス様!!お願い!だって私、本当に……月が好きなの。…迷惑かけてたなら謝るから。ごめんなさい!!」
「……。」
目一杯体を折り曲げて、私は頭を下げた。
そして勢いよく顔を上げて、刃を向けてる神様に向かって祈るように声をかけた。
「私、月野って名前でね。小さい時から月が好きなの。ずっと好きで…欠かさず見てたの。」
「知ってるよ。」
「あ、そうだよね。神様だもんね。」
「……ずっと好きって言う癖に、キミは色んな人に恋してるじゃないか。」
「え?」
意味が分からずキョトンとしていると、不貞腐れたようにコンス君はぷいっと顔を背けた。
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