プロローグ

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 今の彼女は上にだぼだぼの大きいトレーナーを1枚着ているだけだ。この季節に外へ出るような装いではない。  いや……季節に限ったことではないか……。  しかし俺の懸念を他所に彼女は「へーきへーき」と陽気に言うと、その格好のままカップラーメンを持って外へ、ベランダへと出て行ってしまう。 「風邪ひいても知らないからね……」  そう呆れて呟き溜息をつくと俺はコートを羽織り、カップラーメンと割りばしを持ち彼女に続いた。  ベランダへ出るとキン…とした空気によって全身を締め付けられた。  自然と両肩が上がり腕をかき抱き身を縮こませる。窓から入り込んだ空気も大概だったが、こうして実際に外に出て感じる空気はその比ではなかった。  身体は小刻みに震えだし、それに合わせて歯もカチカチと鳴り始める。  あまり長居できそうにない。 「うま…!」  そんな長居を躊躇う朝の空気の中、彼女は椅子に腰かけ湯気の立ち上るカップラーメンをはふはふとやっている。その薄着でどうしてそう平然としていられるのか理解できない。  俺が顔を引きつらせていると、彼女は食べるのは止めずに視線をこちらへと向けた。
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