プロローグ

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 ラーメンを啜りながら手すりの先、朝の街へと目を向けた。  高台に建つこのアパートからは街を一望できる。  眼下にびっしりと建ち並ぶ住宅。近景、中景、遠景と目で追っていくにつれて地形は盛り上がり丘陵地帯となる。その高台にそって住宅は段々となって建ち並び、住宅群の丘をつくり出している。  きっとあちらの高台から見る景色も俺が今見ているものと同様のものに見えるのだろう。  ここでは普通のことだ。  この地域の地形故のありふれた風景。  日の昇る前の街は青に近い灰色に染まっている。  人々が眠るのに合わせ同じように未だに眠りについている街はひっそりと静まり返り、この朝の空気も相まって静謐さが漂っている。  ただ、すでに活動を始めている者もいるようで、辺りには一足早く起きた小鳥がさえずりながら飛び回り、新聞の朝刊を配達するバイクが走る音がする。運行を開始した始発電車の汽笛の甲高い音がこの季節の澄んだ空気を突き抜け震わせ、街全体そして高い空へと響き渡った。    こだまするその音を聞きながら「今日も1日が始まった」ということを噛みしめる。
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