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彼女はウイスキーの瓶を掲げてこちらを伺う。
「だから背徳感がすごいんだって……」
「ようこそ背徳の楽園へ!」
「何……?その人としてダメそうな楽園……飲まないよ」
「飲まないの?」
「飲まないよ。俺までダメ人間にはなりたくない」
「まぁまぁ良いじゃん。飲もうよ」
そう言って彼女は俺の言葉を無視して俺のマグカップにウイスキーを注ぎだした。そして続いてお湯を注ぐとカップを2つ持って再びベランダへと出てくる。
「はいっ」と言って渡された湯気の出たマグカップを見下ろすと、比較的濃い目の琥珀色の液体が揺れており、ウイスキー独特の良い香りがした。
背徳に満ちている。
「濃くない…?……これ」
「ちょっと濃い目に作ってみたよ!」
彼女が得意げに胸を張り、にっと歯を見せて笑う。
何てことをしてくれたのか。俺は決して酒に強い方ではないのだ。好きではあっても強くはない。
「俺も今日学校なんだけど…」
「ガンバレ!」
この野郎……。
俺の恨みがましい視線を無視し彼女はマグカップを傾ける。ずずーっとお湯割りを飲むと「ふは~~~」と緩んだ表情で白い息を吐いた。幸せそうで何よりだ。
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