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そして、いよいよ投票日当日。
世界中の空が未確認飛行物体で覆いつくされた。
「運動会なんか無くなってしまえばいいのに」「期末テストは地震で中止」
子供たちの積年の恨みが夜空の向こうに発信され、数ある雑念の中から「宇宙人が地球を侵略すればいいのに」が採用された。
純粋無垢な心の叫びを受け取った高度知的生命体は子供たちを苦難から解放すべく宇宙児童相談所に通報した。
宇宙児相は強大な警察力を伴う銀河連邦所属艦隊を引き連れて地球を訪問した。もし抵抗するようなら容赦せず、宇宙警官立ち合いのもと、立ち入る。
世界が蜂の巣をつついたような騒ぎになった。とうぜん、学校も休みである。
万事休すかと思われたその時、赤いマントの山田マンがよくわからない造形の仲間を引き連れて地元にカムバックした。
そしてうちの父である。これまた肌にピッタリとしたスーツを纏い颯爽と纏った。そして小脇にキーボードを抱えて、ピースサインを突き上げている。
「ちょ、お父さん」
私が父にどういうつもりか意図を訪ねると「地球の危険があぶないんだ」と一言の残して座り込んだ。そしてどこからともなく召喚した100インチ大型液晶モニターを三面鏡のごとく配置し、ガチャガチャとキーボードをたたき始めた。打楽器かよ。
すると、カっと空の一角が燃え上がった。
なんということでしょう、UFOが黒板消しで拭いたように消えていく。
「おとーさん。ハッキングでどけんがせんでください」
余りの荒唐無稽さに私は苦情を申し入れた。だって、安っぽいハリウッド映画じゃあるまいし、そもそもUFOはWindowsOSで動いているのか。
「ぐぬぬ」
横で見ていた山田メンも我慢しきれず父親のターンに乱入した。
そして、本人に夜空の星がはじけるがごとくUFOが内部から破られる様をまざまざと見せつけた。
やがて、空が茜色に染まるころ、侵略者は全滅した。
暮れなずむ夕日を浴びて二人の父がたたずんでいる。
何だか私は涙が出てきた。
おとうさんの後ろ姿は偉大です。
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