おとうさんのせなか

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「緊急PTA会長選挙ですって? どうしてこうなった」 校長が卒倒するのも無理はない。喧々諤々の結果、保護者の満場一致で学校側が悪いという理屈にたどり着いた。 「結論から申し上げますと、ここは一つ、ガツンと物申すべきだと。しかし、それに相応しい人材がいないので、PTA会長を選びなおすそうです」、と教頭。 「しかし、急に言われても…」 校長はハンカチで汗を拭きながら手渡された決議文を読んだ。 会則に「不測の事態が生じ、可及的速やかに対処すべき課題が円滑に処理されない場合は保護者の総意でPTA会長を解任できる」とある。 そういう次第でPTAの伝統芸能「必殺、推薦」という名の押し付け合いによって、うちの父が会長候補に選出された。 他にも並み居る強豪?がひしめいている、というが、私からみれば誰もが迷惑そうにしていた。 さて、うちの父といえば…そういえば、選挙期間が始まるまですっかり父の存在を忘れていた。それほどまでに我が家では存在感が薄い。 空気よりも薄い。もう星間物質レベルにスッカスカ、無の空間に限りなく近い。
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