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お店では大きなお腹で接客をしていると,たいていの男は気を使ってくれた。なかにはお腹を触らせてくれだの,お腹に耳を付けて音を聞きたがる男もいた。そしてほとんどの客が,まるで挨拶のように「母乳を飲ませてくれ」と言ってきた。
女は笑いながら「お父さんになってくれたら母乳飲み放題だよ」と言って,毎回同じことを繰り返す男たちのくだらない要求をかわした。
客たちも笑って応えたが,目の前で大きなお腹で煙草を咥え,強いアルコールをあおるようにして朝まで飲み続ける女を心のどこかで侮辱していた。
「ねぇ……知ってる? あの子,以前いた街でもお腹大きいまま接客してたらしいよ……」
「あの子,もう何人も子供を堕ろしてるって噂よ……」
「あの子,子供が何人もいるらしいんだけど,父親は全員違うし,そもそも父親がわかる子供のほうが少ないらしいよ……」
「あの子,何度も出産してるのに一人も子供が家にいないらしいよ。みんな父親に連れて行かれちゃうみたい……」
お店の女たちは常に同僚の陰口に華を咲かせ,太客の前では媚びた笑いと露骨に開けた胸元で自分を売り込んでいた。
暗い店内では安いアルコールが高級ワインのような値段で提供され,近所の中華料理屋のチャーハンが十倍もの値段でテーブルに並んだ。
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