1人が本棚に入れています
本棚に追加
俺は立ち上がった。俺だけではない。兄貴も弟もだ。
「エワロズ兄さん、これは!」
「親父に助けられた」
負傷を治す術。それも複数の人間を一気に癒やす術。
「まだぼくには使えない術だよ、それ」
「兄貴、もう一度奴を引き付けてくれ。大業を発動させる」うまくいくとは限らない。という言葉を無理矢理飲み込む。
ウェルケが「守護」を発動させる。兄貴にその術がかかる。兄貴は再び剣を振るう。俺は気配を消し、地面に描かれた目当ての文字へと手を伸ばす。
「門」の文字を中央から両端に動かす。
地面に描かれた文字が光る。よし、発動した。急いで次だ。
「召喚」の文字を逆になぞる。
禍神の下僕が光る輪の、さらに中へと引き戻される。が、奴はやはり抵抗する。
「兄貴、奴を押し返せ!」
俺の言葉に兄貴は体当たりをかまし、ウェルケが体当たりした兄貴を力尽くで引き戻す。
鈍い光の輪の中央に奴が収まる。俺はそれを確認すると、「戻」をなぞる。本来は落とした物を取ったり、指定した場所に何かを戻す術なのだが、思惑通りにいってくれ!
鈍い光が輝く光にかわる。二重に描かれた外側の円の方から、青く光る文字が躍る。
親父め、やってくれる。
瀕死の重傷を負いながら、俺がここに来る事を願い、描いた文字。俺はその文字に指を滑らす。
「帰還!」
最初のコメントを投稿しよう!