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「森の中に遺跡?」
俺は問い返した。
「うん、村の南に広がる森の中にあるそうなんだ。父さんの遺言によると」
白を基調としたローブの胸元に、麦の穂を象った首飾り。典型的な耕作神に使える司祭姿のそばかすだらけの青年は、俺の弟ウェルケ。
神聖魔術の使い手と成長したウェルケは、親父の最期を看取ったそうだ。
「ヒューロン兄さんと共に、その遺跡に行ってやり残したことをして欲しいって」
俺達三人兄弟の一番上の兄ヒューロンは、三人兄弟で親父を墓地に埋葬し終わると、鎧と剣を取りに戻っている。
遺跡絡みの遺言。どうりで魔術師ギルドが馬を貸してくれる訳だ。
「で、その遺跡に行ったことあるのか?」
「ぼくはないよ。エワロズ兄さんの事で父さんが王都に赴いた頃には、ぼくは耕作神の司祭の見習と勉学中だったから」もしかしたら、三人兄弟の中で一番長くこの村にいたヒューロン兄さんは知っているかも。と、言葉を続ける。
「兄貴待ちか。それまで休む」
「うん、そうして。馬はどうしたらいい?」
「王都方面に行く者があれば、その者に預けろ。なければ、魔術師ギルドの印をなぞり、帰れと言えば魔術師ギルドに戻るよう躾られている」俺の身体は休息を求めている。兄貴がここに戻ってくるまで眠ることにしよう。
よろよろと立ちあがり、親父の部屋の扉をあけ、ほんの数日前まで親父が使用していた寝台に転がる。
疲れ切った俺は、たちまち暫しの休息の眠りへ沈んでいく。
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