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国境警備隊に支給される鎧と剣を身に纏った兄ヒューロンを先頭に、俺達三人兄弟が森の中を歩いていると、行く手を遮る人影が見えてきた。
「ロロ」褐色の肌に、白い髪。そしてとんがった耳。そう、その姿は黒き森妖精の民の姿そのもの。
「ガウエンの三人兄弟、揃ったわね。遺跡へ案内するわ」
黒き森妖精の民は禍神の僕、世間ではそう忌み嫌われている。だが、親父はこの森の奥深くに住む黒き森妖精の民と交流があり、親交を結んでいた。
「あなたたち三人兄弟、ガウエンからこれから向かう遺跡のこと、聞いたことはない?」
俺達三人兄弟は揃って首を横に振る。が、俺は、ロロの腕やふくらはぎに赤と白で入れ墨が入れられていることに気付き、それは今は亡きお袋と同じようなものだと気がつき、そのことを口にした。
「エワロズは気付いたのね。あなたの左腕の入れ墨、あんたたち三人の母の身体に入れられた入れ墨を参考にしたのでしょ?」
俺は頷く。俺の左腕には入れ墨がある。俺はどんな文字でも読めるが、文字を綴れない。綴れないと魔術が使えない。そこで、お袋の身体の入れ墨を思い出し、「明かり」を本を見ながら腕に書き、それをなぞり唱えると術が使えることを知り、試験でずるをした。
「エワロズはどんな文字でも読める。そう、ガウエンは言っていた。じゃあ、これは読めるかしら」ロロが立ち止まり、突如着ていた服を脱ぐ。俺達三人兄弟は、一度は目をそらしたものの、ロロに見ろと言われ、下着姿のロロを見つめる。
ロロの身体に彫られた白の入れ墨は「解除」だの「守護」だの「対魔」だとか読み取れる。が、赤の入れ墨の方は……
「禍神の花嫁……」
花嫁、いや、これは……
「違う、これは…………………………生贄」
背筋に冷たいものが流れた。
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