魔術師の息子達

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「この一帯では、ある一定毎に流行病が起きていて、その流行病を治めるために禍神の花嫁を捧げる風習があったの」 ロロは脱ぎ捨てた服を拾いあげ、その一つ一つを身にまといながら言葉を続ける。 「でも、あたしたちの長は、ある一定の時期に、この辺りだけに流行病が起こるのはおかしいと疑念を抱き、王に密書を送った。そうしてこの地に派遣されたのが、ガウエンとあんたたちの母さん」 そんな話、親父から聞いたことない。亡くなったお袋からもだ。ただ、親父もお袋も、この近くの村の出だとは聞いていたが。 「そうしてあたしたちは見つけた。禍神の花嫁を捧げるこの場所に遺跡があり、元凶があることを」 ロロが歌いながら舞う。白と黒き森妖精民が主に使う精霊舞だ。その舞いが終わると木々が揺れ、扉を開くかのように開けた。 ぽっかりと空いた空間に、降り立つ一枚岩の前に突き立てられた親父の魔術杖。その杖飾りの翡翠から、おびただしい棘が溢れ、一枚岩を覆っている。 「岩を覆う棘は、ガウエン最期の術よ」 無数の棘を出す技は精霊舞の一つ。 「親父は精霊舞も使えたのか」 親父が何故翠の杖と呼ばれていたのか、なんとなくわかった。 「あたいが教えたの。ガウエン、人間にしては精霊とかが見える人だったから」遺跡の中に入るから、準備をして。ロロの顔付きが変わった。 俺達は頷き、松明に火を付けウェルケに持たせ、左腕を露わにする。 「俺が先に歩く。兄貴はしんがりを、ロロは俺の後ろから案内を」俺は遺跡探察の体形を皆に伝える。 ロロが親父の形見である杖に触れる。杖から放たれた棘は、蜘蛛の巣を手で払うかのように消え去る。すると、一枚岩に四角い黒い空間が現れた。 俺は左腕の入れ墨に指を滑らせ、「明かり」「危険察知」「魔術感知」を発動させる。ロロも親父の形見を手に小さく舞い光球を出し、現れた黒い空間に向かって飛ばす。 「さて、行くとするか」 俺達は親父が瀕死の重傷を負った遺跡へと、足を踏み入れた。
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