魔術師の息子達

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光球、「明かり」、松明の明かりが暗闇に光をもたらす。 「耕作神の礼拝堂より小さいけれど、祈りを捧げる場所として作られたのは間違いないね」 「血の跡がないところを見ると、父はここから出るとき、通っていないとみていい」 と、なれば、親父は「脱出」の術を発動させたか、別の出口から出たことになる。 「禍神の元凶を探している最中、あたいとあんたたち三人の母さんは罠に掛かり、禍神の花嫁としてここに運ばれた」行方不明になった二人を、ガウエンは「探索」の術を発動させ、この森の中を歩き回り、この場所を見つけたという。 「あたいたちが正気に戻った時には、村の外れの家で寝かされていた」だから、どうガウエンが戦ったのか知らないとロロは言う。 「ガウエンは翠の杖の称号を得、上魔術師にも選ばれた。けれど、何度もこの場所に足を運び、村に居を構えた」 俺達三人兄弟が産まれるより、ずっと昔のことだ。 「ガウエンが森の中の遺跡に行くたび、あたいも同行した。あんたたちの母もヒューロンがお腹に宿るまでは一緒だった」そのお袋は、ウェルケがまだ小さい頃に亡くなっている。 ロロの手が動き、崩れた祭壇の壁画の一部に向かって光球が動く。 「隠し扉だ」 「ええ、ここを見つけたのは、あんたたち三人が家を出た後よ」と、いうことはおよそ十年前か。 「ここから先、ガウエンと最後に歩いたルートを歩むわ。罠とか残っていると思っていいわ」 俺は無言でうなずく。 光球、「明かり」、松明が次なる部屋を照らす。 親父が流した血の跡は、まだない。
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