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背中に痛みが走る。
「初めてだから、この程度で済んだのだぞ」
ああ、この声は親父だ。
「盗賊ギルドに属さず盗みをするからだ」
これは、魔術師ギルド、盗賊ギルド、親父にこっぴどく叱られた頃の……
死の直前に見るという夢なのだろうか。
「エワロズ、次はその指を落とされるぞ。だが、お前は王都に住み続けたいのだろう?」親父の言うとおりだったので、頷き返した。
「お前のあらゆる文字を読み解く力は、遺跡探索に役立つ。盗賊ギルドで業を磨け。そして魔術師ギルドからの遺跡探索の依頼に応えよ」
また、背中に激しい痛みが走る。
俺の意識は別の過去に飛ばされる。
「遺跡探索で使えそうな術の文字を、身体に彫りたいと?」
俺が盗賊ギルドで業を覚え、魔術師ギルドの依頼で遺跡探索に加わるようになり、やはり魔術が使えたらと思い始めた頃だ。
実家近くの遺跡探索を終えた後のことだ。その頃には、親父一人が生活していた。
「遺跡探索を繰り返しているうちに」
「よく気づいたな。で、どの術を彫るつもりだ?」
俺は遺跡探索で魔術師によく頼む術をあげた。しばらく考え込んだ親父は、試したいことがある。と、いくつかの本を手に外に出ようと促した。
俺は地面に描かれた円の中に立ち、渡された本の最初に書かれていた文字を指でなぞり、その全部の術を発動させた。
あの時、確かに親父は驚きの顔をしていた。
「エワロズ、お前はとんでもない探検家になれる。王都に帰り入れ墨を入れろ。だが、最初に身体に入れる入れ墨は……」
俺の意識は一気に今に戻された。そして願う。俺の身体よ、動け! 動いてくれ!と。
左手が動いた。
届け、俺の指。
届いた。一番最初にいれた入れ墨に指先を滑らす。その文字は……
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