アンジーとオフィーリア

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「帰らないの?」  一人残った青年に訊ねる 「うん、たまには仕事以外の話ししたいなぁって…」 そう言ってオフィーリアを見た そしてカウンター席に座る オフィーリアを挟んですわる二人の男性、年上の紳士と若い青年 「誰かさんが見たら焼きもち焼きそうね」ステージを終えたダナ カウンターを後ろから見て呟いた 「でも会社の社長と飲むのは いろいろ気を使うんじゃ…」 ロナルドが彼に話しかける 「社長はもともと父の知り合いで 子どもの頃から知ってるから なんだか身内みたいな者かな…」 苦笑いで話す青年 「えっ?じゃあ私も会ったことが あるのかなぁ」 「どうだろう…僕が小さい頃には何度か家に来たことあるけど その時フーちゃんは友達の家に住んでたからこっちに来ることなかったからね」 少し考えて答える青年 「誰かにそうね」 笑顔で言うオフィーリア 「何…君たち昔からの知り合い?」「親同士がね…」 ためらいがちに言った 「君から親のこと聞いたのって」「それだけだから…」 まだ話そうとしたロナルドの言葉を遮るオフィーリア 少しの間沈黙が続く、店内に流れる生演奏が響いている 「でも彼こないね、いつだって フーちゃんの側にいるのに」 沈黙を破り彼女に問いかける青年 「さっきも言ったでしょ! アンジーは彼氏じゃないから それに今日は家族揃ってお出かけだからね」 「そういやぁ、サーニンのレース 見に行ってんだっけ」  「で、ロナルドはそのレースに いくら懸けるつもりだ?」 カウンターの中にいるマスターが 身を乗り出して聞いた その様子に笑いだす青年 「家族連れかぁ… 私には縁がないのよね」 なぜか寂しそうなオフィーリア 「縁がないって?さっき親の話し してたよね…?」 彼女を見て訊ねるロナルド 彼から目を反らし手元のグラスを揺らすと中の氷が音をたてる その様子をボヤッと見つめている 「フーちゃん、そんなこと言わないでよ、うちの両親や叔父さんが 寂しがるよ…フーちゃんのことを 娘だと思ってるんだからさ!」 「娘、かぁ…」彼の言葉に笑みを浮かべグラスに残っている酒を一気に飲み干すオフィーリア そして椅子から降り二人を見た 「じゃ、私帰ります」 振り向きもせず店を出ていった その後ろ姿が泣いてるみたいだ
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