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これは、戦争の時の話だ。
とある船大工がいたそうだ。
とても船の好きなおじいさんで、技術も群を抜いていたらしい。
だけど、悲しいことにおじいさんは殺されてしまう。銃殺だった。
海はいわば国の入り口だ、敵国の上陸した際真っ先に殺されてしまった。
おじいさんの死体が見つかったのは敗戦後。船蔵にあった自分の制作した船にもたれかかるように死んでいた。
その後、船蔵の中にあった彼の制作した6隻の軍艦が沈められることとなった。敗戦国に戦力を残してはいけないからな。
だけど、その日の前日の夜、不思議なことが起きる。
船蔵には誰もいないし、もちろん船の中にも誰も居なかった。波が強い夜でもなかった。なのにもかかわらず、船が突然動きだし、船蔵の門を叩いた。
本来、船が海に出る際に人が開く門を船が叩く。
木材が叩く音が周囲に響く。
海面に破門が広がる。
叩く。
叩く。叩く。
叩く。叩く。叩く。
そして壊す。
門は砕け、船が続々と外に出ていく。彼の作った6隻の船、すべてが。
さすがに門が砕ければ、近くに住んでいた人たちがその音に気付く。
しかし気付いた時にはその船たちはすでに遠くの海を走っていた。ほかの船はすでに沈められているため、後を追うこともできなかった。
ただ眺めることしかできない人々の中で、一人があることに気付く。
紅い。
その船たちが通った場所が紅く満ちていたのだ。
しかし、船の塗料が落ちたわけではないということは見ればわかった。なぜなら、その色を私たちはよく見てきたものだったから。
人から絞り出された、真っ赤な血の色を。
「そしてこの光景を見た人々は、その船たちを『真紅に満ちた怒りの艦隊』と言ったそうだ。」
一人のおじいさんが、子供に囲われながら話をしている。
子供たちは興味津々で体を前のめりにして聞いており、おじいさんは昔のことを話すようにただ淡々と話していた。
「その船は結局どこに行ったの?」
一人の少女が問いかける。
「結局、船は見つからなかったらしい。血を流す船なんてすぐに見つかりそうなものなのにな。」
実際にどうなったかは分からないが、一応の話では海に出た船を探すため、相手国が捜索に動いたが結局発見されることはなかったそうだ。
「じゃあ、船はどこに行ったんだろう。」
「そうだな...、もしかしたら弔いのために敵国に向かっているところかもしれないし、すでに沈んでいるのかもしれない。はたまた、沈められるくらいならと海を気ままに泳いでいるのかもしれないな。」
「じゃあ、おじいさんはどうしてると思うの?」
一人の少年の質問に少し考え、答える。
「そりゃ、まぁ、
主のいるここに来るために海を走っているんだろうな。」
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