25 誰かさんからの入れ知恵で

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「でも、今やはり改めて思った。明日をお前と生きたい。……永遠に」  甚八さんは、袖のなかに手を入れると、すっと箱を差し出した。開かれた先には、キラキラ輝くダイヤのリング。 「……っ!」  言葉に詰まっていると、甚八さんはもごもごと口を動かした。 「き、気に入らなかったからって、返されても困るんだ。前に言ったろ、俺は……」 「そうじゃなくて……」  私はふふっと笑った。 「こんなにゴージャスでラグジュアリーでブルジョアジーな告白を受けているのに、なんか甚八さんが甚八さんすぎて……」 「……バカにしてるのか? 確かに、正装といえば和装をしてしまうし、ヘリコプターで告白なんてのは俺の意見ではないが……」  私がくくっと笑うと、甚八さんはふいっと顔をそらせてしまう。その照れた顔が可愛くて、私は衝動的に彼の頬に口づけた。 「誰の意見でこうなったのかは聞きませんけど……」  私はふう、と息を吐いてから、すうっと吸い込んだ。甚八さんの目をしっかり見据えると、その眼鏡の奥の瞳に私が映る。 「もう、居候でも家政婦でもなく、甚八さんの傍にいていいんですね」 「……お前、そんなことを思っていたのか。俺の中では、とっくに特別な存在で……」  甚八さんははっとするとまたごにょごにょと口ごもる。私は笑いながら甚八さんの顔を覗く。 「私も、ずっと前から甚八さんのこと、特別な存在でした」  へへっと照れ笑いすると、甚八さんが呟いた。 「なぁ、えっと……そのー、例え、特別な存在になったとしてもだ。……部屋の掃除、してくれるか?」  私は頷いた。 「じゃあ、明日からは一緒に掃除しましょう。料理も、一緒にしましょう。だって、これからずっと、一緒にいるんでしょ?」  そう言うと、視界が急に紺色に包まれる。優しい肌触りの彼の着物は、大好きな匂いがして。それに包まれていることに、ドキドキするのに安心して。  彼の背中に手を回せば、甚八さんの顔が急に近づいてくる。 「愛果、愛している」  その声を合図に、私の唇がふさがれる。私は、幸せな気持ちで彼に唇を預けた。私たちの足元では、まるで祝福するようにキラキラと街の明かりが輝いていた。
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