26 だからって全部実行しなくても

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「……それ、さっきも言ってましたよね?」 「は?」 「だって、ヘリコプターの中でも永遠に一緒にいてくれって……」 「だって、それは、兄さんが……」  また顔を赤くした甚八さん。その顔を見ていると、なんだかこちらまで頬が熱を上げる。 「陽臣さんに何言われたか知らないですけど、全部実行しなくたっていいんじゃないですか! 実際被ってるし!」  照れ隠しについそう言うと、甚八さんは小さな声で呟いた。 「すまん……」 「そういえば、甚八さんと陽臣さんってどんな関係なんですか?」 「俺と兄さんの関係……?」 「だって、血繋がってないですよね? 親戚とかでもなさそうだし……」  甚八さんはコーヒーカップを置くと、腕組をした。 「……父が事故の後しばらく仕事を休んでた 頃、加倉は呉服屋としてなかなかな危機になってしまってな。そんなときに、加倉を救うために融資したのが東丸宮商事で。当時の社長は、俺の父と仲が良かったんだ」  へぇ、と相づちをうつと、甚八さんはそのまま続けた。 「でな、その息子が兄さんで、それがまたしつこくて。『兄さんと呼べ』から始まって、経営学もろもろは彼に教わった。結果、加倉二番店の経営を任せて貰えて、兄さんには感謝してるんだが……どうもあの破天荒な性格には俺もたまについていけん」  甚八さんは笑った。
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