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「……それ、さっきも言ってましたよね?」
「は?」
「だって、ヘリコプターの中でも永遠に一緒にいてくれって……」
「だって、それは、兄さんが……」
また顔を赤くした甚八さん。その顔を見ていると、なんだかこちらまで頬が熱を上げる。
「陽臣さんに何言われたか知らないですけど、全部実行しなくたっていいんじゃないですか! 実際被ってるし!」
照れ隠しについそう言うと、甚八さんは小さな声で呟いた。
「すまん……」
「そういえば、甚八さんと陽臣さんってどんな関係なんですか?」
「俺と兄さんの関係……?」
「だって、血繋がってないですよね? 親戚とかでもなさそうだし……」
甚八さんはコーヒーカップを置くと、腕組をした。
「……父が事故の後しばらく仕事を休んでた
頃、加倉は呉服屋としてなかなかな危機になってしまってな。そんなときに、加倉を救うために融資したのが東丸宮商事で。当時の社長は、俺の父と仲が良かったんだ」
へぇ、と相づちをうつと、甚八さんはそのまま続けた。
「でな、その息子が兄さんで、それがまたしつこくて。『兄さんと呼べ』から始まって、経営学もろもろは彼に教わった。結果、加倉二番店の経営を任せて貰えて、兄さんには感謝してるんだが……どうもあの破天荒な性格には俺もたまについていけん」
甚八さんは笑った。
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