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結希が言うと裕道が「大歓迎です」ときっぱり言った。
「ハンドメイドの作品だけで食べていくことは可能ですか?」
ストレートな質問に真里菜は焦ったが、裕道は「正直、これだけだと難しいです」とあっさり答えた。
「お金のためにはいろいろやってますよ。工場でバイトしたり、近所の畑や牧場を手伝ったり」
裕道は真里菜よりも年上の男性だ。そんな人が、バイトで生計を立てていると言う。
「そりゃ、お金はあったら嬉しいですよ。でも、1日中働いて自分の好きなことできないよりは、多少お金で苦労してもこうやって山奥で好きな作品作って、犬ちゃんと嫁さんと暮らせるのが幸せなんですよ」
「私も裕道さんもそうですけど、ものづくりで生きていきたい、って思っちゃったから、今さら普通の人生に軌道修正できないんですよ」
あっけらかんと笑って言う果乃子の言葉が、真里菜の体を電流のように駆け抜けた。真里菜も同じだ。声優として生きていきたいと思ったから、今さら普通の人生に軌道修正できずにもがいている。
「オフレコも大歓迎ですよ。何でも聞いてください」と裕道が言うので、真里菜はこう質問した。
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