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「正直、がっかりした」
「まー、そう言わないでください。洋介は敏感なので、時々拒否反応を示す時があるんです」
青ざめて貧血で倒れそうな顔色をしていた洋介は、車の後部席にもたれてプールから上がった少年のように唇を紫色にして隣の望美に囁く。
「もう帰ろうぜ」
「ダメだって。刑事さん、マジで怒ってるから」
「写真撮ったんだろ?見せてやれ」
そう言われて、望美がさっき撮ったばかりの部屋の写真をファインダーで再生して、洋介が恐怖した存在を発見して顔を歪めた。
「なんなのコレ?」
望美は洋介が見ている方を適当にカメラを向けてシャッターを押しただけだったが、想像以上に鮮明な心霊写真が映っている。
「やっぱり悪霊だったのか?」
そう呟いて運転している夏川千聖の前にカメラを出して不思議な写真を見せた。
「これ見てください。普通だったら映らないけど、きっと洋介がいたから撮れたんですよ」
壁や天井に女性のメイクした美しい目が浮かび、ショットが切り替わる度に位置が変わって何かを見ている感じがした。
「なんなのよ?」
片方の瞳孔の開いた美しい目は人の心を見透かして嘲笑い、悪意がこもった視線を見た者に送っている。
「残像です。自殺した女性はその目に耐えられなくなったのでしょう。SNSで誹謗中傷されるのと同じ悪意がその目には込められている」
洋介はそこまで話して、自分も死にたい気分になったと心の中で呟いた。
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