いつも、一緒に ―side 宝 ―

1/4
58人が本棚に入れています
本棚に追加
/52ページ

いつも、一緒に ―side 宝 ―

       {― side 宝 ―} 「(たから)くんだ! 電車一緒になるの初めて」 「朝からオーラがハンパない。コマチくんは一緒じゃないのかな」 「本当にカッコイイよね、同じ学校だったら良かったのに」  家から最寄り駅のホームで、声の主たちはとりどりの制服を着ている。恐らく近隣の中高生たちだろう。色めくような彼女たちの声に五式(ごしき)宝は苦笑し、同じ学校の生徒たちは彼女達を少し面白そうに見遣っている。  そこに軽やかな足音が響いてきた。 「間に合った! 宝っ」  ホームに駆け上がってくる音とともに、今朝一番に見たかった満面の笑顔に鼓動が反応する。 「良かった葉琉(はる)、今日も好きだよ」  すぐさま溢れ、口を突いて出てきてしまう想い。 「うん、おはよう」  宝の“好き”は、葉琉にとって幼い頃から交わされる挨拶だと思っているらしい。  アパートの隣部屋に住む古町(こまち)葉琉(はる)とは、幼馴染と言うより兄弟のように育った。  互いの母は共同で雑貨店を営む。両家ともに父が居ないので、葉琉の姉・満琉(みちる)と三人、協力し合う二人の母に育てられたと言っても過言ではない。 「おはよう、葉琉。あれだけ早く寝ろって言ったのに、ほら」  昨晩遅くまでゲームをしていて、なかなか寝なかった葉琉は、案の定、朝から迎えに行っても部屋から出て来ず、部屋を覗くと未だ夢の中。起こしても起きてくれず、自身が遅刻するわけにもいかないと、心配しつつ置いてきた。  間に合えばと、駅前のコンビニで買っておいたバターロールを一個手渡す。一口で放り込み終わり、もぐもぐと口元を動かし始める。宝はすかさず、葉琉の手にミニサイズのカフェオレを乗せた。 「ありがと。だって魔王倒さないと次に進めないだろ」  一気に飲み終えた葉琉に二個目のバターロールと、健康優良児の男子高生はそれでは足りないので、エネルギーゼリーを渡しておく。
/52ページ

最初のコメントを投稿しよう!