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雑記
≪稲生物怪録≫の紹介
≪稲生物怪録≫は、江戸時代中期の三次を舞台とした、稲生平太郎と人間をおどかしにやってきた魔王たちとの不思議な体験を綴った物語です。物語には多くの怪しげな妖怪が現れるだけではなく、現在も存在する場所や、主人公の平太郎をはじめ当時の三次に実在した人物が登場します。この作品が誕生してから絵本や絵巻など、さまざまな形態で日本各地に伝えられてきました。それにつれて、物語の内容もまた微妙に変化していますが、いつ、誰が作成したものか、最初はどのようなタイトルだったかなど、いまだ明確にはなっていない謎の多い作品でもあります。
ストーリーは、寛延2年(1749)の7月1日、旧三次藩の町内で暮らす16歳の稲生平太郎のもとに、突如、怪物姿の魔王が現れ、それ以降、一か月間にわたり、さまざまな怪しげな妖怪によっておどかし続けられますが、最後までそのおどかしに耐え抜きとおしたというものです。伝承されるにつれ、物語の主軸をなす構成要素(三次・寛延2年・16歳)がなくなったり、逆に魔王が去っていく際に、槌を平太郎に手渡すといった、当初にない内容がつけ加えられたりします。明治以降においても、講談、小説、戯曲作品などに生かされ、最近ではマンガ、オペラ、神楽などにも取り上げられるというように、今日まで伝承され成長し続けている、ある意味で、隠れた大ベストセラーともいえる物語です。
≪稲生物怪録≫所蔵資料紹介
『(仮称)稲生物怪録絵巻』
江戸時代 1巻
稲生武太夫(成人後の平太郎)の同僚である柏正甫が武太夫から聞いた話を記録した〈柏本(かしわぼん)〉の内容が描かれ、詞書(ことばがき)がない作品。この〈柏本〉系統の絵巻は現存数が少なく、≪稲生物怪録≫研究において貴重な資料の一つです。
『百物語絵巻』
明治時代
題箋に「百物語天(地)」とあるが、≪稲生物怪録≫に関する内容を描いたものです。描かれた妖怪たちの姿はどこかユーモラスで、絵巻が書写された際に作者が創作を多く加えていることが分かります。
『(仮称)稲生家物怪録』
〈絵本〉作品の「絵」の部分のみを冊子に貼りつけたもの。後人の手により、背の部分に「稲生家物怪録 画巻 平田篤胤」と書かれています。乙類系統の絵本にやや類似しますが、他に見られない絵柄が見られます。
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