その五

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その五

 私と彼は結婚した。しかし、父と母はそれを待っていたかのように別居し、その後離婚した。  夫が偶々父と出会った時に何となくその話となり、 「君に娘の事を末永くと頼みながら、自分達がこのような事となって真に済まない。しかし、私にはどうしてもアレを許せない事が有ったのだ。」  とだけ父は言ったそうだ。  その事を聞き、私はどうしても押さえきれない気持になって父を訪ねた。  そして年来の疑問を父にぶつけた。 「お父さん、私はお父さんの本当の子供なの?」  父は私の問いに驚く様子も見せなかった。まるで来るべきものが来たかという態度だった。 「さあな。血液型とかも良く知らんし、DNA鑑定もしてないからな。・・・・・・けどな、お前がお父さんと呼んでくれる限りは、私はお前の父だよ。」  父は昂然と言った。話を続ければ、異論は許さんと言いそうであった。  私は父の迫力に押されて、それ以上その問いを続ける事が出来ず、 「じゃあ、又。」  と父の下を辞した。  帰り道、本当に馬鹿な事を聞いたと思った。父の胸の内を思うと涙が溢れて止まらなかった。  父よ、何がどう有ろうと私はあなたの娘です。あなたの娘で良かった。  これからは、もっと頻繁にお父さんと呼ぼう。そう、思った。
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