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その四
私もやがて社会人となり、何人かの男性と付き合いもした。そのうちに結婚しようかなと思う人も出来て、家に連れて行き両親に会わせた。父とは思春期の頃から妙な距離が出来て、あまりお父さんと声を掛ける事も無くなっていた。
私の彼は風采の上がらない、あまり容貌も良くない男だった。でも気が合って、どちらからとも無く結婚を意識する仲になっていた。
母は私の彼の見栄えが気に入らなかったのか、彼のいない所に私を引っ張って行き、
「何処が良いの? あんなパッとしない男。見た目もイマイチだし、出世しそうもないし。あなたみたいな美人ならもっと良い男選び放題でしょ。」
と文句を言った。私は彼とは気が合うのとだけ答えた。
「娘の何処を気に言ってくれたのかね。」
と父は私の彼に尋ねた。
「典子さんが時々僕に作ってくれた料理が美味しくて・・・・・・。」
と彼は不得要領に答えた。父は黙って深く肯いた。
その後、父と彼の話を盗み聞きすると、父は、
「良く私の娘を選んでくれました。末永く大切にして下さい。」
と頭を下げていた。彼は恐縮しまくった様子でドギマギしながら父より深く頭を下げていた。
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