Last episode

1/1
183人が本棚に入れています
本棚に追加
/37ページ

Last episode

目が覚めると、理人の顔が目に入った。 まだぼんやりとした頭で見つめていると、理人の暖かくて優しい手が頭に触れる。 「おはよう、龍也」 「ん・・・おはよう。理人さん」 ズキリ、と泣きすぎた頭が少し痛んで顔を歪めると理人が心配そうな顔をした。 「起きられそう?ご飯作るけど出来るまで横になってる?」 「大丈夫です。俺も手伝います」 いつも用意してくれるのを待つだけだったので、たまには手伝いたい。 「うん、じゃあ一緒に作ろう」 そう言ってゆっくりと体を起こす龍也に手を貸し、起こしてくれる。 オムレツにサラダにコンソメスープ。 理人にレシピを教わりながら二人で料理を進めていく。 誰かと一緒に、誰かのために料理をするのは楽しかった。 二人分の料理を皿に盛りつけ食卓に運ぶ。 初めて作ったオムレツは少し焦げてしまったけれど、なかなか美味しくできたと思う。 またこんな風に一緒に朝食をとれるなんて、と思うと幸せでにやにやが止まらない。 そんな自分を、理人は向かいの席から温かい目で見つめて微笑んでいる。 昨日、すべてが終わることを覚悟して話をした。 もう二度と会えなくなる。もう二度と名前を呼ぶ事すらできなくなる。そう思った。 その翌日に、こんなに幸せな気持ちで二人で食事をしているなんて、夢みたいだ。 「龍也」 ソファで食後のコーヒーを飲んでいると、ふいに理人に名前を呼ばれる。 カップから口を離し顔を向けると、真剣な表情をしている理人と目が合う。 「愛してるよ」 まっすぐな目で見つめてそう告げられる。 パッと顔を赤くして少し俯く。 でもすぐに。 「俺も大好きです!理人さん」 そう言って満面の笑みを理人に向けると、つられて理人も笑顔に変わる。 そこにもうあの悲しそうに笑う理人の影はなかった。 暖かな日の、どこにでもある休日の風景。 コーヒーの香りと柔らかな君の笑顔と。 こんな日がずっと続けばいい。 いや、続けていこう。 二人で。 End.
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!