episode 31

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episode 31

「リュウ君」 どれくらい時間が経ったんだろう。 空になって冷たくなったマグカップから顔を上げると、ママと理人の姿があった。 「理人さん」 久しぶりに会えて嬉しくてパッと笑顔になる。 だが反対に理人の顔は晴れない。 「お待たせ、龍也。行こうか」 そう言う声は優しいけれど、表情は悲しい顔のままだった。 「理人」 手を引かれ入口に向かう後ろからママの声がかかる。 振り返った理人に続ける。 「全部ちゃんと話しなさい。で、自分が本当にどうしたいのか、真剣にリュウ君と向き合いなさい」 見たことのない真剣な顔でママは言った。 「わかってる。もう答えは出てるから」 そう答えた理人の声も硬く、そんな二人の会話と空気に不安が募っていく。 久しぶりに入る理人の家は少し散らかっていた。 ソファにTシャツがかかっていて、テーブルの上にはタバコと灰皿が置いてあった。 (理人さん、タバコ吸ってたっけ) 吸っているところは見たことがないし、一緒にいるときにタバコのにおいを感じたこともない。 「ごめんね、散らかってて」 そう言って服をどかしタバコと灰皿をキッチンに下げる。 「コーヒー淹れるから、座って待ってて」 キッチンから声がかかりソファに腰掛けて理人を待つ間も、不安で胸がざわついていた。 「はい。砂糖とミルクも入れてあるよ」 そう言って龍也にカップを手渡す。 「ありがとうございます」 緊張しながらそれを受け取る。 冷ます仕草の合間に、隣に座りコーヒーを飲む理人を盗み見る。 どこか思いつめたような顔でテーブルをじっと見つめている。 理人のそんな顔は見たことがなくて、その横顔を少し怖いと思った。
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