ハル

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 「ユキさん、これあげるね」 「あぁ、ありがとう」 意味のわからないことばかりな状況に、思考を停止させていると、真っ白な女の子。 モブ子ちゃんから手渡されたのはビー玉で、中にはピンクの水玉模様がきめ細かに浮かんでいる。 モブ子ちゃんとは、今わたしが勝手に決めた女の子に対しての名前。 「おまもりね」 「うん、ありがとうモブ子ちゃん」 「その呼び方は酷いだろ」 「いいんだよ!ユキさんがわたしの名前つけてくれたんだもん!」 「ちょっ、あ、あの」 ぎゅっと二の腕部分に抱きいてきて、わたしを庇ってくれるように、ハルに対してベロを出した。 戸惑っていた中で、なんとなく頭を撫でてあげる。 感触は、何一つ変わらずに人の髪の毛で、違和感があるのはその色だけだった。  それから、街の広場に呼ばれたわたしは、取り囲まれる中で色々と話をしてもらうことになった。 この街のことも、真っ白な人間達のことも、ハルのことだってなにも知らないから。 この先のことを知らないといけない気もしているような気もする。 「さぁさぁ、どれどれ、ほうほう」 集まる真っ白の中からかき分けて出てきたのは猫背に長い白のシルエットの髭を生やし、茶色の杖を持った。 「白モブ爺さんじゃよ」 「長老、変なこと言わないでくださいよ」 あははは! つい笑ってしまうのは仕方のないこと。 雰囲気的にも、この町で一番偉そうな存在だと感じるので、なんとか笑いを抑える。けれど、身体は勝手にピクピクと動いてしまい、止めようとはしてくれない。 「私が長老です、はじめましてー。なんでしょうかね、ユキさん」 「はじめましてだと思います、ひとついいですか?どうしてわたしの名前を皆さん知っているんですか?」 長老の優しい声を聞いて切り替わるように問う。  先ほどから、会ったばかりの真っ白さん達にわたしの名前を呼ばれていて気になっていたんだけど、そんなことを気にしていたら、この空間だってこの存在達も、どう説明されても理解できそうにないのは明確。 「知ってるよ!」 「当たり前ですよー!」 「そうだよー、ユキさんのこと知らない人いないよー」 「ユキさんは優しい人だからねー」 囲んでいる白い存在達がワイワイ盛り上がる。凄い勢いで跳ねたり手を振ったり。 まるで有名人みたいで気分がいいです。 ニヤニヤし出しそうな顔をなんとか手で抑えて堪える。 「あはー、恥ずかしいなぁー」 「これはこれは、騒がしいのぉー」 「ユキこっちだよっ」 またハルに腕を引っ張られて、気分が良くなっているわたしは抵抗もしないまま、また身を任せた。
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