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「こんな感じだよ、わかったかな?」
「もっと簡単に教えてよー!」
「わしもわからんー!」
ハルから、この世界の秩序と言うものと、この場所ではない三つの駅のこと、絶対に忘れてはいけないことを説明してもらった。
だけど、納得が追いついてこないわたしの思考が駄々をこねていた。それに同乗して長老も面白おかしく駄々をこねている。
「長老!いつまでもふざけていないで、そろそろユキに教えてあげてください」
困惑しているハルは一人だけ真面目。
「嫌じゃぁ!わしはユキに嫌われたくないもんー」
「そうだよー!わたしにもっと優しくしてよー!」
一番わたしの気持ちを知ってくれていそうな長老の考えに便乗しちゃうのは、悪いことではない。そんなぬるい考えで、わたし達は子供のように畳に寝そべっていた。
「このくそじじぃ」
「え。」
「えっ?」
冷めた声で、それにわたしたちを軽蔑する表情で、席を立ち外へ出て行ってしまった。
静まる空間に取り残されたわたしと長老はやっと、流石に言い過ぎてしまった事を反省する。
「ハル怒っちゃいましたね。どうしたらいいですかね?」
「ゴホン。わしも少し気を誤らせてしまった」
このあとどうするのかは、聞かなくても考えなくてもわかってる。この先の為にも、そうしなくてはいけない事はわかっています。
「ちょっとわたし謝ってきます」
そう言って席を立ち、その場から立ち去ろうとすると、長老から思いもよらないことを言われる。それも、先程のふざけた様子ではないと、確信できてしまう声だった。
「ユキさん、あの奴の気持ちもわかってください。私たちのことも」
その言葉に何か深い意味があるというのは感じられたけれど、あまりの急変さに戸惑いも隠せずにいた。
わたしは軽く頷いて、ハルの行方もわからずにドアから飛び出していく。
こんな時のわたしの心情は不安に満ちている。
だけど、その不安が何者なのかなんてわかるはずもなくて、気を紛らわせる為に、必死になって、ハルを探し回る事にした。
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