ハル

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 街外を進んでいく。 優しく撫でるようなハル雨が身体に当たる。 ピタっピタっ。 濡れている原っぱに、わざと音を立てて足を着いて歩く。 雨の音と足音にリズムを取るわたしはポジティブなんです。 ポジティブに捉えたら問題はないと思う。 「…」 でもやっぱり、匂いも音も雰囲気も大好きなのに、結局濡れてしまうのは嫌い。 だから雨は嫌い。 この考えは果たしてポジティブなのでしょうか。  目に雨が入らないように俯いて、自分の進む足元だけをみる。 これはきっと、今はポジティブになれない。  いつの間にかどんよりする気持ちに支配されていて、その理由もわからなければ、きっかけもわからない。  ピタっと足を止めた。 その理由は、わたしの足と草原しか見えなかったわたしの狭い視界に、ハルの足が見えたから。  わたしはもう一歩進んでハルの踵部分につま先をくっつける。 そして、わたしよりも背の高いハルの背中にわたしの額がくっつく。なんだか、今のわたしがおかしく感じる。  わたしはなんでこの空間に居て、この世界に慣れているんでしょう。知らないはずのハルと言う存在に対してどうしてこんなにも信頼を寄せているの? 「ふあんだよーう」 「僕も不安だよ」 自然と口に出てしまった言葉に、反応してくれるハルに額をもう少し強く押し付ける。 「一緒だね」  今感じる不安と言うものがなんなのか、それがわからないことが不安なの。その不安から逃げている自分に対して不満を押し付けてしまう。 これじゃあ、いつか本当に死んでしまうんじゃないかなって、それもまた不安。 「だいじょうぶ、ユキなら理解できる。きっと納得もできるから。死なないで、殺さないでよ」 「うん。だいじょうぶ」 根拠もない言葉もわたしの心も、それを掴むように支えかけるハルの言葉。わたしの本当の味方なのはハルなのかもしれない。 そんな都合の良い解釈をしてしまうわたしをハルは許してくれるのでしょうか。 そんな汚いわたしは、大きな背中に手を当てた。瞬間だった。 「そっか、だいじょうぶならユキが僕の話納得するまで徹底的に教えてあげるからここに座って」 「えっ。ちょっと濡れ…」 またまた急変するハルに驚いている間もなく、湿っているはずの地面にわたしのお尻は押し付けられた。 「ほら、濡れてないだろう?」 「あれれ?湿っていませんね。あれれ?雨も降ってないですね。あれれ?」 「本当にだいじょうぶなのか?ユキの旅なんだから向き合わないと駄目だ」 お説教モードのハルは嫌い、それにさっきまでの良さげな雰囲気とわたしの気持ちを返して欲しい。 もちろんそんな文句は言えずに、ただハルの話をわたしが納得するまで聞かされる事になってしまいました。
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