ハル

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 トントントントン。 「あぁ?」 目をひらく。視界がぼやけている。 なのでもう一度目眠たいから目を瞑る。 ドンっ! 「ゔぅっ!?」 お腹に衝撃を受けて目が覚めた。 「ユキさんおはよう!」 わたしのお腹の上に横になる白の女の子が楽しそうに跳ねる。 「おっはっよっゔぅっ」 叩き起こされた場所は誰かの家の寝室らしい。 身体を起こして、ふと右隣を見るとあの優しい光が窓越しから透き通ってきている。 その光を見てまた落ち着く。 あっ。 大事な事を思い出した。 だからベットで同じ光を見る女の子を見た。 そんな表情は、悲しくもなくて苦しくもなさそうで安心できた。さっきの事はもう何ともないようだ。 きっとハルと話し合ったんだ。そう思い込むのもいいけど、肝心のハルの姿がない。 「ハル、今どこにいるかわかる?」 そう女の子に聞くけど、窓越しの光を見つめたまま首を傾げるだけ。  ベットから降りて白の女の子の手を取り寝室から出る。何か違和感を感じる。 何処かで見たような風景。 けれどそれが思い出せなくて、立ち止まっていると次に美味しい素敵な匂いが、玄関奥の方から漂ってきた。 「ごはんだぁ!」 掴んでいた手が走り出してわたしごともっていかれてしまう。 「ちょっと?」 奥のドアまでたどり着き勢いよくドアを開く女の子は元気よくも、慌ただしい。 「ユキさんが起きましたー」 「あらあら、おはようユキちゃん」 見知らぬ白い女性に。 「ユキさんも、ごはんを食べて行きなさい」 見知らぬ男性。 2人は夫婦なんだと思うけど、わたしは当たり前にもその2人の子供じゃない。 だけど、なんだろう。 心が落ち着いてしまう。余計な気遣いもしなくていいなんて思っちゃう。 「うん、お腹すいた」 不思議な感覚に身を任せてその空間へ入る。 女の子も一緒。  「いただきます」 既に並べられている普通の白米ににお味噌汁、おかずはハンバーグ。 4人揃って食べ始める。 これはまるで、家族のような距離感。 「ユキさん、ハンバーグ美味しいね」 「美味しい!」 誰かと話して食べるのは久しぶりでもないのに、そう感じるのは。 わからない。  「ただいまぁ」 ドアが開き現れたのはびしょ濡れのハルだった。そしてまた何も言わずにドアを閉めて玄関を歩いて行ってしまった。 「お風呂行っただけだから気にしないでね」 優しいお母さんがそういうのでそれに従った。夢中に食事を進めていると、しばらくして灰色の一式パジャマ姿のハルが入ってきた。 お母さんが言ったように、どうやらお風呂に入っていたらしくて、わたしの横をハルが通過すると共にシャンプーのいい匂いがした。でも、席に着くハルは機嫌が悪そうで、目を合わせてくれなかった。 その代わりに、アイコンタクトで、正面に座るお父さんから部屋を出るように促される。 そして、まだ途中だった食事を置いて、女の子と一緒に元いた部屋へ戻ることになった。 まだ食べたかったのに。
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