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「ユキ、少しは寝れたの?」
「だいぶ寝れましたよー」
「はやくはやくぅー、ババはだれかなー?」
賑やかになった部屋。3人でトランプゲームを始めることになった。
この世界には現実世界と同じ物はある感じなんだけど、流行じゃないというか、古いというか。
「くそったれ!」
ババはわたしになった。
「あー、ババはユキさんだ!わかりやすぅー」
「ユキはすぐに顔に出るからね」
開始早々煽られて頭にきてます。まぁ、頭良いのでわたしは負けませんけどね。
「よっしゃー」
「ユキさんよわーい」
跪いて両手を床につく。
「どうしてなの!わたしは頭良いのに!」
「運のゲームに頭良いも何もないからね、それにユキはそんな頭よくないだろ?」
「うるさぁいぃー!」
あははは。
わたしとハルが冗談混じりな話をしていた時でした。
「悪くないもん!ユキさんは頭良いもん!」
前みたいに女の子がわたしとハルの間に入る。そして、わたしを一生懸命庇ってくれていた。こんな子がわたしの妹であって欲しいものです。
「ありがとうモブちゃん!もっと言ってやって!」
「ユキさんに誤って!」
「ご、ごめんなさい」
「よーし、もうだいじょうぶだよ。悪いやつは成敗したね!ありがとねモブちゃん」
「もうやんない!ハルが悪いんだからね!」
「えっ?わ、わたしそんな怒ってないよ?」
わたしの声は届かない。
女の子は腕を組んで早速さと部屋から出て行ってしまう。それを追いかけようとするがハルに腕を掴まれた。
「ちょっ、あの子どっか行っちゃうよ?」
「だいじょうぶ、直ぐに機嫌良くなるから。それよりこっちきて」
「えっ、あぶなっ!」
突然、ハルはわたしの腕を強引に引っ張った。寝室のベットへ投げ倒され、抵抗の隙もないまま両腕をベットに押しつけられた。
こんな時のハルの表情は、何かに取り憑かれたみたいにまっすぐわたしを見つめている。
だからわたしもハルの目を見つめると、今度はハルの顔が近づいて通り過ぎた。
「ど、どうしたの?」
「いや、こうしてたい」
「うん、わかった」
耳元で囁かれるのも別に嫌な気分ではない。
それよりも、こんな状況が怖くないのはどうしてなんでしょうか。こんなことされていてもわたしは平常心。
いや、落ち着くのはどうして。もしかするとわたしは変態だったのかもしれない。
「ユキ」
「うん」
悲しそうに名前を呼んで、わたしの背後にぎゅっと手を回してきたハル。
これからどうなるのかはあまり考えたくはないけれど、少しだけそう考えちゃうのは仕方ないんです。
わたしからもハルの背中に手を伸ばして服を掴んだ。
そしていつ来てもいいように、目を瞑って身体の力を抜いた。
「ユキ」
「うぅー」
耳元で名前を呼ばれて力が入ってしまう。
「ユキ離してくれ、雨臭い」
「あっ、はい」
呆気を取られてしまい力が自然と抜け落ちる。
「落ち着いたから、もうだいじょうぶ」
「あぁ、そうですか。ならいいんですよ」
「うん、あとユキ雨の匂いするからお風呂入ってきなよ」
「あ、了解しました」
ぼーっとしてしまって、言われるがままに部屋を出てドアを右へ曲がりお風呂へ向かう。
「あ、ユキそっちじゃないよ」
春の指示が聞こえて振り返り、もう一度部屋の前を通る。その際ハルを見る。
「なに?」
「いえいえ、なんでもないですよ。ほんとになんでもないですよ」
鈍感なその顔を見て、なんかめちゃくちゃショックでした。
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