出発点

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薄らと、どこかで味わったことのある不安定な揺れを感じる。それはだんだん明確になっていく。 どんっ。 「いでぇっ」 大きく助走をつけつけたような、そんな不安定な揺れに後頭部を打った。 打った箇所に手を当てながら驚きに目をひらくと、視界全体に映るものは列車内だった。 あまり把握できない状況を理解しようと、まだ眠たいだろうわたしの目を擦ってあくびをする。  背後の窓から車輌の所々を差し込む暖かな光を見て、感じる。車輌にいるのは不思議にもわたしだけで、「こんなオンボロ列車、よく壊れずに走ってるなー」と、そう誰もが言いだしそうなボロボロな感じを、また独り言葉にして呟いた。 今座っている車輌の端から端じまで伸びる座席は赤いシート。そんなシートに背後からの不明な暖かい光に反射していて、ホコリが溜まっている。 だから、わざわざシートを手で叩く。 「うぉっ」 舞うのはやっぱりホコリで、やっぱり差し込んでいる光に反射した。 「ふわぁーはぁーー」   もう一度、大袈裟にあくびをした後、ゆっくりと深呼吸をする。 この深呼吸は自分の頭の中で、だんだんと今の状況を理解して、何か一つ不安な言葉を吐くための準備だ。 すぅーと息を吸い感じていた不安。 喉を震わせて吐き出した。 「ここどこ!?」 列車の中である。
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