10人が本棚に入れています
本棚に追加
/151ページ
薄らと、どこかで味わったことのある不安定な揺れを感じる。それはだんだん明確になっていく。
どんっ。
「いでぇっ」
大きく助走をつけつけたような、そんな不安定な揺れに後頭部を打った。
打った箇所に手を当てながら驚きに目をひらくと、視界全体に映るものは列車内だった。
あまり把握できない状況を理解しようと、まだ眠たいだろうわたしの目を擦ってあくびをする。
背後の窓から車輌の所々を差し込む暖かな光を見て、感じる。車輌にいるのは不思議にもわたしだけで、「こんなオンボロ列車、よく壊れずに走ってるなー」と、そう誰もが言いだしそうなボロボロな感じを、また独り言葉にして呟いた。
今座っている車輌の端から端じまで伸びる座席は赤いシート。そんなシートに背後からの不明な暖かい光に反射していて、ホコリが溜まっている。
だから、わざわざシートを手で叩く。
「うぉっ」
舞うのはやっぱりホコリで、やっぱり差し込んでいる光に反射した。
「ふわぁーはぁーー」
もう一度、大袈裟にあくびをした後、ゆっくりと深呼吸をする。
この深呼吸は自分の頭の中で、だんだんと今の状況を理解して、何か一つ不安な言葉を吐くための準備だ。
すぅーと息を吸い感じていた不安。
喉を震わせて吐き出した。
「ここどこ!?」
列車の中である。
最初のコメントを投稿しよう!