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それからずっと進んで行ったのはいいんだけど。
「ハルさんハルさん?なにも見えないよ」
真っ暗の真っ暗。
自分の手を目に近づけてシルエットでもいいので、形を見ようとするけどそれすら見えないし、今わたしが何処にいてどんな体制をしているのかもよくわからないくらいに暗い。
外部からの音もなにも聞こえない。
聞こえるのは怯えるわたしのおどおどした足音と、ハルに触れているパジャマの擦れる音だけ。
「落ち着く?それとも怖い?」
暗闇で静寂な場所なせいなのか、ハルの声がはっきりと聞き取れる。
「落ち着くけど怖い」
「僕らはここで生まれた」
突然なハルの一言が、わたしの心をズーンと押さえつけてきた。だからなのでしょうか、理由もわからないのに憂鬱になるように落ち込み出すわたし。
「聞きたくない」
その話は聞きたくないって、わたしの心臓は激しく高鳴る。
なのにハルは、わたしを無視して話し始める。
「僕らは全部、この空間から生まれたんだ。あの花達も街も季節も空気もね」
「めんどくさいよ」
「それに、ここら辺も最近までは薄い光が届いていたんだ、でも今はこんな感じでなにも見えないんだ」
「だから、やめてよ」
「あの女の子は僕が見つけたんだよ。ここで泣いてたから拾った。僕も最初は長老に拾われたんだ。それに、その時から色があったわけじゃなくて、僕も真っ白だったんだよ」
「もういい」
「でも、なんで色がついたかわかる?」
「うるさぁいっ‼︎」
溜まった感情が飛び出してしまい、わたしのその感情に喉が耐えきれずに掠れた。
「ごめん」
どうしてこんなに怒ってるの、わたしはどうしてハルに感情的になってしまうの。ハルだけじゃないよ、あの街の人も雰囲気も。
甘えてしまうのはなんで?
考えてもわからないことを考えると眠くなってきちゃう。でもひとつだけ、ひとつだけわかったことがあるの。
「わたし。もっとハルに…甘えてもいいよね」
そんな自分勝手な台詞を吐いて、暗闇の中で朦朧としていた意識を理由に、ハルに身体を預けた。
「うん、甘えてよ。おやすみ」
耳元で優しく吐くハルの台詞を聞いて、目を瞑る。預けた身体はハルがどうにかしてくれるはずです。でもどうやって?暗くて見えないでしょ。
「ユキ以外と重いよ」
あぁ、女の子にそんなこと言っちゃだめなんだから…。
次起きたら頭叩いてやるからぁ…。
最後に目蓋をあける。
真っ暗なはずの目の前に、薄っすらとハルの背中が見えていた。
不思議だったけど、もう限界なので目を瞑ります。
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