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ポケットに手を入れる。すると、なんだろうか。湿ってからもう一度乾かした紙のような物が手に当たる。
それを、ポケットから形を崩さないように取り出すと、思った通り。
湿ってから一度乾いただろう紙であった。
「あっ」
半分におられているこの紙に見覚えがあります。
紙を切らないよう開くと、ハルがメモしてくれた文字がギリギリわかる。
ーーーーーーー
1,この場所も、これから旅する場所も忘れるな
2,これから通る三つの各駅は必ず降りて、やるべきことをすること!絶対に駅を引き返したり,飛ばしたりするな
3,必ず元の世界に戻ること。
ーーーーーーー
紙を折りたたんで、そっとポケットに戻す。
そして明るい空を見つけて溜息をつく。
今まで嫌だったことが嘘のように思えてきた。
これから進むべき旅の方向が今進んでいる方向です。だから今はその準備をしないといけないらしいのでしょう。
そう思った矢先に、背後からすごく心地いい風に撫でられ振り返った。
「うぐぅー」
一瞬でわたしの目の前が真っ暗に包まれ、暖かくていい匂いに支配された。
「勝手にどっか行かないでよ」
大切な誰かを失いそうな声でハルはわたしをぎゅっと覆う。
これで何度目になるんだろう。
わたしはずっとハルに甘えているけど、甘えていたいけど。でも、いつまでもこうしていられないと言うことがさっきの紙を読んで、やっと納得できた気がする。
「ハル?列車治さないとわたしは帰れないの?」
そう、わたしがこの一つ目の街でやるべきこと。それは列車の修理なんだ。
きっと。
「そうだよ。だから今日は街でその話も兼ねての、ユキのための食事会があるんだ」
とても素敵なイベントだと言うのに、それを報告するハルはなんだか落ち込んでいる。
どうしたのか尋ねようとしたけれど、聞くのはきっと今ではないと思ったわたしは、黙ったままハルの横について街に戻る為の道を進み始めた。
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