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「どうして一人でどこかに行っちゃうんだよ」
「ごめんなさいー」
ハルからのお説教を受けながら、ハルと二人なら不安にもならないこの世界にまた甘えている。
「まあいいや、無事ならさ」
「でも街が急に消えたんだよ?」
「言い訳はいいから」
「すみませんー」
本当なのに。こんなの街が悪いじゃん。
でも、こうやって優しい街のせいにするのは
気が引けます。
いやいや、やっぱり街のせい。
文句をぶつぶつ心の中で蒸発させていると、わたしたちはこれで幾つ目の丘を越えるだろう。丘の頂上付近に差し掛かっていた時、突然ハルはわたしに後ろを向くように促した。
素直なわたしは、その指示に従いって後ろを向く。
「少し進んで、ここで止まって」
「ちょっと危ないからー」
「いいよ、戻ってみて」
「もしかして街があるんでしょ?」
「そ、そんなことないよぉ〜」
だいたいこんな感じの流れが来たらそれしかない。そう思いながらも、少し期待しながらも。
バレバレなハルの演技に騙されてみる。
右回れ右!
「うわっ。なにこれ」
「凄いだろ?」
丘上から見下ろす。予想通りに見える街を呆気に見てしまうのも仕方ない。
それもそのはずで、街が大きい白いテントのような物で隠れていたのだ。
「なんか、怪しい組織の建屋みたい」
「そう言うこと言うなよ、ユキがいない時みんなでやったんだからさー」
「じゃあ、忙しくなるってこのことだったんだね」
「女の子も手伝ってくれたんだ。お礼言ってあげたら喜ぶと思う」
「じゃあハル!ありがとう!」
「えっ、いや僕はいいんだ…」
「ハルもわたしのためにあれ張ってくれたんだよね?だったらハルにもお礼しないとわたしが嫌なの」
「あ、うん。その、じゃあ、別に。うん」
わかりやすく照れているハルに見覚えがあったのは気のせいなのでしょう。
でも。そんな姿を見てしまい、幸せを感じたのは気のせいではなかった気がした。
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