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「ねぇ、ここは何県?その前に日本なの?」
「そう、僕もこの花も、あったかさも、この光もこの場所だよ」
「なにそれ、よくわかんないってば」
わたしの質問をテキトーに受け流した腹に文句を垂れれば、一本の土道を隣り合わせに歩き始めている。辺りは花と優しい空から降り注いでいる柔らかな光だけ。
まだまだ歩き続けるようなので、隣にいるハルに鼻歌を披露しながら進む。
「んーふーんふふーふー」
「なにそれ?ヘタクソだね」
「うるさい」
『いやだ』
突然頭の中で憎むように掠れた誰かの声が、ぐるぐると聞こえた。
立ち止まってしまい、その声を聞こうとしたけど、それ以上はなにも聞こえない。
「ユキ、どうしたの?」
「あ、いや。なんでもない」
不思議な感覚。
何処かで聞いたことある声なのに思い出せなくて、思い出そうとすると忘れようとしているように感じてしまう。
眉間にシワを寄せて深く悩み込んでいるとハルの声が遠くなる。
「早く進もうよ」
離された距離を縮めるために歩くスピードを上げる。そして先にいるハルの方を向いてみる。足を弾ませてみた。
もっともっと早く進もう。
涼しい風が吹いてくれているから。
「まだまだ歩ける」
「元気だな」
「まぁーねー」
ステップ、ステップ、ステップ!
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