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すてっぷ。すてっぷ。す、てぷ。
「あぁー、疲れた」
「早いな、まあ僕も疲れたけど」
どれほど前に進んでも全然街も人も見えなくて、調子に乗った自分に後悔。
汗を滲ませてだんだんとこの暖かさにも嫌気がさしてしまいそう。
「もう力尽きました」
「疲れてるのはお互い様なんだけどさ、ユキが進もうとしないとこのままだよ」
「はぁい?わたしステップ何回したと思ってるんですか?」
お説教的な返答に苛立ちを覚えて地面に転がる。
落ち着いてくれる身体と気持ち、合わせてゆっくりと呼吸をする。
気持ちいいのは変わらない、居心地がいいのも変わらないのに。
少し、ううん。少しじゃなくて、すごく。
不安を強く感じてる。
目を瞑っていても、息を吸っていても吐いていても。治らないこの不安は一体どこから来ているんでしょうか。考えてもわかりません。
「ユキ?街が見えたよ」
「なんでぇ!?」
パッと起き上がってハルが指を指している。
その方向を追って見る。
「あそこが僕のいる街だよ」
「うわお、ちっちゃ」
「やめろっ」
「でも、あんな街、さっきまで見えなかったよね?」
「あんな街?」
「冗談ですぅ」
「もういいよ、行くよ」
不貞腐れてしまったハルの後に続き歩き始める、今度は目的地がはっきりとしているので大変ではない。
だけどあの街、わたしがこの場所で横になる前に見た限りだと、遠くの方までお花畑いっぱいだった。そんな場所から突然現れた感じだ。それもハルが指差す方向を見た時に。
もしかしてハルは魔法使いだったりして。
そしてここは魔法の世界なのかもしれません!
「そうなんでしょ!?」
「ちがいます。なんの話だよ」
「はぁー、つまんない」
わかり切っていた事を聞いて、期待してしまい後悔。
「でも。」
「え!なに?」
急に立ち止まるハルが空を見上げる。
釣られて、わたしも見上げた。
空は光を帯びていて色はわからないけれど暖かそう。上に行けばここよりも気持ちいいのかもしれない。
「いいや、なんでもない」
「なにそれ、そこまで期待させたなら言ってよ!」
「ほら、行くからな」
笑いながら誤魔化すハルを細めで睨み付ける。
なんだか距離感の掴めない関係に戸惑いつつも、次は明確な目的地へと向かい始めた。
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