忌まわしきは煙の中に

18/39
前へ
/936ページ
次へ
その一方、残されたメンバーはテーブルを四方から囲んで睨み合っていた。その視線の先には自然豊かな島に広がる地形を模したタイルと、様々な種類の駒が並べられている。 入浴の組み合わせとなっている龍希とエルト、有子と越光、青山と楠木、レピンスとネスレはそれぞれチームを組んで以前は途中で中止になってしまった四人用のボードゲームを嗜んでいた。ただ遊ぶだけではなく、その順位で入浴の順番を決めようと言う交流を兼ねた催し事である。 「では、私の番だねえ」 越光はダイスを二つ振り、その出目の合計値を申告した。これによりそれぞれのプレイヤーはタイルの種類に応じた資源のカードを手に入れることができる。 このゲームの目的は資源を用いて道や拠点を造り、その拠点から更なる資源を得ることで次々と自身の領域を拡大して行くことにある。そして最大の特徴は手に入れた資源はプレイヤー間で自由に取引きが可能と言うことでる。この取引きは手番のプレイヤーが持ち掛けると言う部分以外にルールはなく、交渉力やコミュニケーション能力が勝敗を分けると言っても過言ではない。 「私は木材を二枚出せる。誰か鉱石を一枚でも良いから譲ってくれないかねえ」 「木材は前に俺の手番で募集したけど誰も反応なかったぞ」 「甘いねえ局長君。幾つもの修羅場を潜って来てその発想は甘すぎるよ」 そんな龍希を咎める越光の発言を後押しするかのように、青山が交渉に応じることができると名乗り出た。 「え、青山お前……」 「君はゲームの最初からトップ独走だ。そんな相手が持ち掛けて来た交渉に応じたら、あっという間に規定ポイントに到達されてゲームが終わってしまうだろう?」 「う……やたら俺にばっかり盗賊差し向けられたりすると思ったらそう言うことかよ。トップは目の敵にされるのか」 「まあ、大立ち回りと人を信じる心でやって来たお前には分からない感覚だろう。目的を達するまで影で耐え忍ぶと言うことも重要なのだ」 「レピンスまで……」
/936ページ

最初のコメントを投稿しよう!

224人が本棚に入れています
本棚に追加