忌まわしきは煙の中に

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「ああっ、しまったそう言うことか……」 「奴の場には使われないまま伏せられたカードが2枚。狙いは明らかだ」 越光の目論見に気が付いた青山が声を上げるが、既に交渉は済んでしまっている。土壇場で逆転のチャンスを掴んだことに感心しているレピンスにも見守られつつ、越光は最後の一枚を引いた。 「どうやら勝利の女神は私に微笑んだようだ」 発展カードは次のターンを待たなければ使用できないルールだが、使用を伴わないものであればその限りではない。越光は今引いたばかりの大きな数字の描かれたカードを見せ、更に伏せていたそれと全く同じカードを全て表に返して勝利宣言を行った。得点カードと呼ばれるそれは特別な効力を持たないが、所持しているだけで1ポイントとなり決着の瞬間までその存在は明らかにならないと言う特徴を持っている。 つまり越光は公開情報で計算すると最下位だが、隠されたポイントを含めると既に龍希と並んでゴール寸前となっており、たった今もう一枚の得点カードを引き当てたことで勝利を手中に収めたのであった。 「あそこで鉱石を渡すべきじゃなかったのか。拠点を都市化させられるだけなら大丈夫だと思ってたのに、山札に3枚だけ残ってる得点カードを引きに行かれるとは……」 「いや、残りは2枚だ」 ゲームが終わったため、レピンスも密かに得点カードを所持していたことを明かした。 「つまりレピンスも俺と並んでずっとリーチ状態だったのに知らん顔してたのか。よくもまあぬけぬけと、青山と一緒になって俺のこと目の敵にしやがって!」 「フッ。このゲームは序盤に悪目立ちしても良いことはない。追う者を演じつつ、隙を見て一気に出し抜くのが有効なようだ。しかし、成る程。人間の世界の娯楽にのめり込むドラゴンがそれなりに多かったのも今なら頷ける」 最初は恐縮していたレピンスも、今では遊びを通して交流を楽しむことができるようになっていた。
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