忌まわしきは煙の中に

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以前ライズと相まみえた際は、昏睡状態にされた他の仲間の命と引き換えに、クレインから託された医療器具でアッシュの命を救うように強要された。そのアッシュからの命を受け、再びライズが有子の前に現れたのは不運では片付けられない悪意によるもの。そして御誂え向きなことに、この場にはまたしても人質になり得る越光がいる。 「そうそう。あの時は一刻を争う事態だったからね。でも今回は無粋なことはしないから、安心して欲しいな」 それは有子に向けた口説き文句か、はたまたこのままの流れで行けば人質になっていたであろう越光への情けか。しかしどちらであったとしてもここから先に希望はない。次にライズの口からでた言葉でそれは現実になった。 「僕は興味があるんだ。仲間を人質にでも取らない限り絶対に口を割らないであろう君の口をそれ以外の方法で割るには、どのくらいハードなことが必要なんだろうってね」 「拷問でもしようってワケ?」 「まあ最終的にはそうなるだろうね。普通に痛めつけても良いし、エッチなやつでも良いよ。ちょうど今裸だしね」 ライズは下卑た笑みを浮かべるが、それは性欲に由来したものではなくあくまで有子を苦しめながら口を割らせるまでの過程を楽しみたいがためのものである。だからこそ余計に寒気がした。 「さあ、好きなだけ抵抗して良いよ。此処には武器にできそうな水もあるしね」 「ッ……!」 挑発に乗り、有子は巻き上げた浴槽の湯を砲弾としてぶつけた。またその飛沫に紛れ込ませるように同じく湯から生成したナイフも飛ばしたが、ライズが蔦を絡めた腕を一振りしただけで全て捌かれてしまった。 「軽いね。必要以上に手加減してる様子もないし、これが君の戦闘能力の限界値ってところか。良くもまあこんな実力であのバケモノに挑んだもんだね。ますます興味深いよ」 ライズはそう言いながら、一歩ずつ有子との距離を縮めた。
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