蟻穴

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「あれは国軍か。俺はそれくらいしか見えないけど、そっちはどうだ」 「我にもそれくらいしか分からぬ。しかし、妙だ……」 ブランクはその違和感の正体を確たるものにすべく龍希を連れてその隊列の後を追った。翼を広げて空を駆ければ大して急ぐこともなくあっさりと接近することができた。 即ち国軍の隊列はそれをしていないと言うことであり、ブランクが感じた違和感もそれである。 「何故奴等はのんべんだらりと歩いているのだ……?」 国軍は王都を離れ、その周辺に広がる廃墟に差し掛かったところであった。ブランク達は一旦物陰に隠れ、その隊列のメンバーは翼を持っていることを確かめた上で改めて疑問を抱いた。 「普通は飛んで移動するのか」 「一応、途方もなく重い荷物を運ばなくてはならない場合や森林の中を隠密に進行しなくてはならない場合は歩く。しかしそれ以外であれば飛ぶことによるデメリットはない。故に外部で戦力になるメンバーは……いや、国軍は翼を持つドラゴンと言う種族に偏重し切っている。それくらい飛べると言うことは大事なのだ」 「なら、飛びたくても飛べないメンバーがいるってことだな」 ブランクの話を聞きながらも隊列を観察していた龍希は、中心の分かりにくい場所に配置された飛べない原因を見付けて指差した。 「テルダか……」 「ちゃんと相方のジアもいるぞ」 テルダはガルドに暗殺を仕掛けた際の戦闘で翼を失っており、当然ながら二度と空を飛ぶことは叶わない。しかしそれは疑問の答えになりながらも、新たな疑問を生み出す結果にしかならなかった。 「テルダが飛べないから、全員がそれに合わせて歩いていると言うのか。罪人から条件付きで復帰した身でありながら、遠征のメンバーに加わるどころか優遇までされているのか……?」 「流石にそこまでは分からん。でも事実飛べないテルダがメンバーにいて、皆が飛べる状況で飛んでないんだ。何か理由があるってことだろ」
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