蟻穴

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テルダのやったことはリスキニアと結託しての恩赦の荒稼ぎであり、これには龍希達も内心引き攣った苦笑いを浮かべた。しかし、説教は受け付けないと言う条件で得た情報であるため態度には表さない。 更に言えば、此処でテルダの目論見を暴露しその行いを問い質したところで事態は何も好転しない。国軍の遠征が中止になり、脱獄犯達はリスキニア達に預かられたまま行き場を失う。 (リスキニア達もここまで露骨なことをやった手前、『テルダが来てくれないならやっぱり普通に脱獄犯は国軍に返します』なんて言えないだろうしなあ。それじゃあ99%の疑惑が確証に変わってそれこそテルダにトドメを刺すことになりかねない) ここはテルダ達の生き残るための執念に免じて苦言を飲み込み、事を荒立てることなく同行することを龍希達は選択した。 「事情は分かったよ。実は俺達も炎の国に用事があって、同じ頼みごとを国軍にもしようと思ってたんだ。このまま付いて行って良いか?」 「好きにしてくれと言いたいが、この隊のリーダーは俺じゃねえ。先頭歩いてる奴に頼んでくれ」 「何を言っている。我々と一緒じゃなければ炎の国には行かぬとお前が駄々を捏ねるのだ。お前がいないと脱獄犯引き取れないからこその歩き移動であろう。多少の我儘は通せる筈だ」 「はあ!?今時点でどれだけ肩身の狭い思いしてると思ってんだ。ふざけんじゃ……」 「テルダ、諦めろ。私の時にも一度やっているだろう。ブランクにはそれすら見透かされている」 テルダの相棒であり感情に流されそうになった際のストッパーにもなるとの後付けの理由で特別に同行を許可されているジアが、正にその役割を遂行するかのようにテルダの肩に手を置いて諭した。 「分かったよ。不義理をこれ以上積み上げるのはマズいからな……」 地下街に潜む脱獄犯の情報は龍希達から得たものであり、それをリスキニアにリークしたことを黙秘してもらった恩もある。ここは狭い肩身を更に削ってでも借りを返しておかねばならない状況でり、テルダは渋々と一足早い交渉に向かった。
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